「冷媒」という言葉を聞いたことはありますか?
冷媒は冷蔵庫やクーラーなどモノを冷やす設備に欠かすことのできないもので、私たちの生活に身近にあります。
一見便利な冷媒ですが、フロンガスでありオゾン層破壊による地球温暖化や環境破壊のリスクを引き起こし地球にやさしくない得面ももっています。
それでは冷媒は使ってはいけないものなの?と思いますが、実は最近では地球温暖化に優しい自然冷媒が注目され、ヨーロッパ諸国では実用化が進んでいます。
今回は、冷媒の仕組みや新しい冷媒となる自然冷媒についてご紹介させていただきます。
冷媒について知りたい方や地球温暖化問題に関心のある方は、ぜひ参考にしてください。
「冷媒」は、熱エネルギーを運搬する役目を持ち、液体の気化により周囲の熱を奪う性質をもっている物質です。
そして、この性質を利用し温度をコントロールする働きをしています。
以下のような設備に冷媒は活用されています。
例えばエアコンにおける冷媒の働きをみてみましょう。
夏の暑い日、エアコンをつけるとすぐに涼しい風が吹き快適に過ごすことができます。
エアコンは、室内機と室外機のパイプから部屋にこもった空気の熱を部屋の外に出し涼しくさせています。
このパイプの中に冷媒があり、空気の熱だけを部屋の外に運ぶ電車のような働きをしています。
このように冷媒はパイプの中で熱を乗せたり、降ろしたりといった働きを繰り返し、運搬の役目をもっています。
では、冷媒をもっと詳しくみていきましょう。
冷媒がどんな物質かというと、人工的に化学合成されたフロンが使用された物質です。
フロンは、
などの特徴を持ち、冷蔵庫やクーラーなどの冷媒のほかに電子・金属部品の洗浄剤や冷却スプレーのガスとしても幅広く使用されています。
便利で画期的なフロンにはデメリットもあります。
継続的にフロンを使用することで、オゾン層破壊を引き起こすため、国際的にオゾン層の保護を目的に対策が講じられるようになったのです。
→1995年までに、オゾン層破壊力が大きな特定フロン(CFC)の生産全廃が義務付けられ、
CFCよりもオゾン層を破壊しにくい代替フロン(HCFC)やオゾン層を破壊しない代替フロン(HFC)が誕生。
しかし、代替フロン(HFC)には地球温暖化係数が大きいというデメリットがあり、2002年、新しい冷媒として地球温暖化係数が小さいイソブタンを使用した冷蔵庫が2002年に日本で発売され、フロン類を使用しない家庭用冷蔵庫として注目されました。
イソブタンは地球環境に優しい反面、可燃性があるため安全性に配慮されており、環境保護への意識が強い層から高い支持を得ました。
その後は様々な企業がフロン類を使用しない冷蔵庫の開発、販売が一般的になり、現在に至ります。
画期的な物質として活躍してきたフロンは、オゾン層破壊や地球温暖化へのリスクが高いため1990年以降は代替フロンへ切り替わっています。
そして近年では、地球温暖化係数0である「自然冷媒・ノンフロン」の利用が推進されています。
自然冷媒は、もともと自然界にある物質を利用した冷媒ガスのことで、フロンを使用しません。
地球にやさしいだけでなく、消費電力の大幅削減といったメリットもあり様々な製品において、自然冷媒への転換が行われています。
自然冷媒(ノンフロン)は、CO2、炭化水素、アンモニア等の自然冷媒
やHFOなどを用いています。
もともと自然界に存在するものなので、自然環境への影響が少ないことが特徴です。
2020年、先進国では特定フロンが全廃され、「キガリ改正」によって代替フロンについても2036年までに生産量85%が削減される予定とされています。
日本では、省エネ型自然冷媒機器導入への補助金交付を行い、ノンフロン推進対策を行っています。
参照 環境省 ノンフロンで省エネ&エコに冷やす
https://www.env.go.jp/earth/ozone/non-cfc/pamph_products/natural_pamph.pdf
自然冷媒(ノンフロン)が「地球にやさしく、省エネにも効果的」ということが分かりましたが、このほかにも実質的なメリットがあるのでご紹介します。
フロン類の排出抑制を目的として、業務用冷凍空調機器からの廃棄時のフロン類の引渡義務など、フロン類のライフサイクル全般にわたる排出抑制対策を規定する法律。
フロンを用いた機器の管理者は、フロン排出抑制法によって「点検・記録、整備・修理、漏えい量の算定・報告、フロン類の充塡・回収の委託、廃棄時のフロン類の引渡し等」が義務付けられています。
また、有資格者による定期点検なども義務付けられているため、フロンの管理には大変な手間がかかってしまいます。
しかし、自然冷媒(ノンフロン)では点検・修理・記録・算定・報告・回収の義務対象外となるため煩雑な管理の手間を省くことができます。
自然冷媒(ノンフロン)の機器を使用すれば、代替フロン(R410A)の30%~40%程度で正常運転ができるため省エネ効果抜群で、使用電力20~45%の削減も!
フロン、代替フロンを使用した機器に比べると、自然冷媒(ノンフロン)を使用した機器ではより効率的な熱交換、放出が行われます。
そのため、危機にかかる負荷が軽減され結果的に機器を長く使用することができます。
冷蔵庫やエアコンに「フロンラベル」が貼られているのを見たことありませんか?
これは冷媒にフロン類が使用されているマークになり、環境影響度の目標達成値(達成地に応じてC・B・A・AA・AAA・Sとランクづけされる)・地球温暖化係数・環境影響度の目標値を達成する目標年度が記載されています。
自然冷媒(ノンフロン)を使用した機器は環境影響度の目標達成値について、アルファベットの「S」となります。
新しくエアコンや冷蔵庫を購入する場合には、フロンラベルを参考にしながら地球にやさしい・省エネということを意識しながら自然冷媒(ノンフロン)である機器を選びましょう。
いかがでしたでしょうか?
冷媒の仕組みや新しい冷媒となる自然冷媒についてお伝えしました。
自然冷媒(ノンフロン)への転換が推進されていますが、私たちの周りには特定フロンや代替フロンが使われている機器がまだたくさん存在します。
このような機器や製品が使用済みになったときは、家電リサイクル法に基づいて処理業者によって適切に回収・処理されています。
冷媒の仕組みを知り適切に使用することや新しいエネルギーの転換を検討し、私たちの住む大切な地球の環境を守る選択をしていきましょう。
※この記事に含まれる情報は公的機関の掲出物ではありません。お客様の責任でご利用ください。