2000年代のはじめに、アスベストの健康被害に関するニュースが盛んに話題になったことを覚えていいますか?
アスベストという名前は知っていても、アスベストが「どのようなものなのか?」「何が問題なのか?」など正しく理解していない人も多いのではないでしょうか?
アスベストは身体に害を与える危険性があり、アスベストを使用した建物を解体する場合は、アスベストが飛散してしまうことがあるので注意が必要です。
アスベストを含む建物を解体するには、どのような点に注意をしなくてはいけないのでしょうか?
今回は、アスベストの特徴や、アスベストを含む建物の解体費用や注意点についてご紹介します。
アスベストは石綿と呼ばれる天然の鉱物繊維です。
アスベストは髪の毛の5,000分の1ほどの細さで、大量に吸い込むことで肺がんや、中皮腫(内臓を覆っている膜のがん)など人体への健康被害を起こすことが知られています。
以前は、高い柔軟性や耐熱性、絶縁性、対薬品性を持ち、値段も安価だったことから様々な工業用用途に使用されていました。
日本では高度経済成長時代に、断熱材や防火材、防音材として様々な場所に建築素材として使用され「奇跡の鉱物」と呼ばれていたこともあります。
しかし、健康被害が知られるようになると社会問題として大きく報道されるようになり、日本では1975年に吹付けの材料としてアスベストを使用することが禁止されました。
2004年には石綿を1%以上含む製品は法的に使用できなくなり、2006年には0.1%以上と改定され事実上使用されることはなくなりました。
新しく使用されることはありませんが、過去に使われた物については引き続き使用している間は、製造禁止の規定は適用されません。
しかし、建物に使われたアスベストは解体工事の際に飛散してしまうリスクがあることから適切な処理が必要になります。
アスベストは吹き付け材料以外にも、天井材や床材、屋根瓦、化粧板など様々な場所で使われている可能性があります。
建築物がいつ造られたかによって、アスベストが含まれているかどうかの目安になります。
アスベストを含む建物を解体する際には、事前の調査と届け出が必要になります。
アスベストが使用されているかどうかは、見た目では判断が難しく、建物の建築年数などからアスベストが使用されているかどうかある程度は判断が可能です。
しかし、古い建物の場合でもアスベストが含まれていない建物も多くあります。
図面等があって、使用されている建材の品名がわかれば、品名から照会できます。
事前のチェックでアスベストが含まれている可能性が高い場合には、専門の調査機関に適切な分析を依頼しなくてはいけません。
調査によってアスベストが含まれていることが確認された場合には、レベルに応じて適切な届け出を提出する必要があります。(数字が小さいほど危険性が高くなります)
レベル1は、発じん性が著しく高い作業(発じん性とは、粉塵の発生のしやすさ)
吹付け石綿、吹付けロックウールなど
レベル2は、発じん性が高い作業
保温材、耐火被覆材、断熱材など
レベル3は、発じん性が比較的低い作業
石綿セメント管、屋根材、外装材、床材など
【参考】厚生労働省/石綿を含有する建築物の解体等に係る届出について
アスベストを含んだ建物を解体する場合には、飛散しないように万全の体制をとって解体工事が行われます。
事前の準備として、届け出を提出するにはもちろん、近隣住民への周知のために工事概要を書いた看板を設置し周知します。
その際には、アスベストの有無について調査した結果を工事場所に掲示しなくてはいけません。
解体工事には、はじめに足場を組み立て防音パネルや粉じんの飛散を防止するためのシートが設置されます。
近隣住民に迷惑とならないよう、慎重かつ確実に養生をすることでアスベストの飛散を防止します。
次に、建物内部の残存物を撤去することで、建物内部を何もない状態にします。
その後、粉じん飛散抑制剤を散布しアスベストの飛散を防ぐ準備をしてアスベストを除去します。
粉じん飛散抑制剤は、作業員への被害も少ないものです。
除去したアスベストは廃棄物として処理するため、飛散しないように厳重に梱包され専用の処理業者に渡されます。
作業に使用する作業着や保護具は使い捨てのものを使用することが義務付けられ、器具は使用後に丁寧に除去作業が行われます。
作業場の清掃は、作業内容に関わらず毎日行う必要があり、養生を撤去する際にはアスベストが飛散しないよう、より丁寧な清掃が行われます。
レベル3に該当する解体工事をする時は、解体工事会社がする場合がほとんどですが、レベル1、レベル2のアスベストの場合には専門業者に依頼されます。
専門業者には、石綿作業主任者の専任や、作業員へ教育がされており安心して工事を依頼できます。
アスベストを含んだ解体工事は、レベルや使用されている場所、量によって費用が異なります。
狭い範囲での使用の場合には数十万円から、広範囲で使用されている場合には数百万円の費用がかかる場合もあります。
解体工事会社にアスベスト処理も合わせて依頼すると、窓口が一本化されて楽に解体工事をしてもらえますが、費用が割高になるというデメリットもあります。
解体工事とは別に、アスベスト処理を分離発注することで費用を抑えられる場合もあります。
複数の解体業者、複数の処理業者に依頼をしてみるのもよい方法です。
アスベストを含んだ建物を解体する際にはどのような点に注意する必要があるでしょうか?
アスベストを含む解体工事は、発注者が届け出の義務を追うことになっています。
違反した場合は、懲役または罰金刑と重い罰則が科せられます。
アスベスト処理は作業する労働者にも危険が伴います。
石綿作業主任者(国家資格)や特別管理産業廃棄物管理責任者の資格を有した作業者が在籍している業者を選択しましょう。
解体業者の中には、金額を安く請け負って適切な廃棄方法や、正しい作業方法をしない業者も存在します。
価格の安さだけで業者を選ぶと、不法投棄やトラブルに巻き込まれることもあるので必ず信頼できる業者に依頼をするようにしましょう。
産業廃棄物の処理にはマニフェスト(産業廃棄物管理票)の締結が義務付けられているためマニフェストを確認させてもらいましょう。
今回は、アスベストの特徴や、アスベストを含む建物の解体費用や注意点についてご紹介しました。
アスベストは身体に害を与える可能性がある物質です。
そのため、適切な廃棄方法や解体方法が義務付けられており、違反した場合には発注者が責任を取らなくてはいけません。
解体業者や処理業者に丸投げするだけでなく、適切な管理が行われているかを確認する必要があります。
適切な管理が行われない場合は、飛散のリスクがありトラブルのもとになります。
必ず信頼ができる業者に解体、処理を依頼するようにしましょう。
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