鍼灸院の経営者や、自宅で持病の治療に医療鍼を利用している方の中には、使用済の鍼をどのように廃棄したらよいか理解していない方もいるのではないでしょうか。医療鍼は、場合によっては感染症の伝播の要因となってしまう恐れがあるため、正しい廃棄方法の採用が推奨されています。
医療鍼は、感染性廃棄物(鋭利物)には該当しないものの、この分類に準じた方法で廃棄することが推奨されています。また、自治体でも廃棄のルールを定めているケースも多いため、事前の確認が重要です。
今回は、医療鍼の廃棄方法について解説します。自治体ごとのルール決めや、優良産廃処理業者を利用する流れや利点について解説します。医療鍼を日常的に扱っている方や、これから医療鍼を利用した治療を開始する方は、ぜひ参考にしてください。
【鍼灸治療院で行われている医療鍼の廃棄方法】
鍼灸治療院で処置した後の医療鍼の廃棄方法は、感染性廃棄物(鋭利物)に準じて処理するのが一般的です。使用済の医療鍼は、法的には感染性廃棄物には該当しないものの、感染性廃棄物(鋭利物)に準じた処分が推奨されています。
注射針や鍼灸院等の施術用針など、鋭利なものは自治体が運営するごみ集積所への排出が禁止されている物品に指定されているため、集積所での処分を不可としている自治体が多いです。一部の自治体では、特定の条件に基づいて医療鍼の収集を行っている場合もあるため、居住している自治体のルールを事前に確認しましょう。
鍼灸治療院では、多くの患者の治療に医療鍼を用いるのが一般的です。廃棄物として取り扱う量も多く、危惧すべき感染症の種類も多岐にわたるため、適切な処分方法を採用しないと、鍼灸治療院自体の経営に悪影響を及ぼすトラブルを引き起こしてしまいかねません。自治体のルール確認や他の処分方法の検討など、事前に確認しておくとよいでしょう。
【在宅医療で用いた医療鍼の廃棄も注意を要する】
近年は、医療鍼を含めた治療用具を病院やクリニックで処方され、在宅医療を行う患者も増えています。例えば、糖尿病患者の方の多くは、自分で注射を行ってインスリン投与を行っています。
在宅医療で用いた器具や資材は、どのような廃棄処理をするのが正しいのでしょうか。まず、注射針((ペン型自己注射針を含む)などの鋭利なものは、処方された医療機関に返却したり、使用済み注射針回収に対応している薬局に持参したりします。あるいは、訪問看護ステーションなどの回収専門の施設で処分する方法も一般的です。
錠剤の包装フィルムや飲み薬および塗り薬などの容器のうち、プラスチック製のものは資源プラスチックとして自治体での廃棄処理ができます。輸液や畜尿および点滴用の栄養剤を入れていたバッグ類やチューブおよびカテーテル類は、不燃ごみとして一般ごみの取り扱いが可能です。ゴム製品や吸入器なども、同様の処理で廃棄ができます。
在宅医療が増えている昨今、廃棄すべき品目も増えてくる可能性が今後も大いに考えられます。使用した道具や資材の処分方法に関しては、処方された医療機関にその都度確認して、正しい廃棄方法を採用するように心がけましょう。
【自治体によって医療鍼の廃棄方法のルールは異なる】
医療鍼をはじめとした医療関連の廃棄物の処分方法は、自治体によって異なります。ご自身が居住している自治体のルールをあらかじめ確認して、違反にならないよう対応することが重要です。以下では、東京都世田谷区における医療鍼などの廃棄方法の基準を紹介します。
世田谷区では、一部の医療系廃棄物を自治体として回収しています。該当する廃棄物は、以下のようなものが該当します。
● 非感染性廃棄物
● 非医療廃棄物
● 家庭廃棄物
● 医療機関内で感染性を滅失させたことが確認できるもの
医療系廃棄物をごみとして出す際は、区が定めるルールに従います。世田谷区では、飛散などが起こらないようにまとめることが義務付けられています。また、所定の金額の有料ごみ収集券を区役所や販売場所で購入し、貼り付けるのも大切です。さらに、廃棄物の種類に応じた区指定のステッカーを貼り付けるルールもあります。
【優良産廃処理業者で医療鍼を廃棄する流れ】
医療鍼など医療系廃棄物の処分をする際は、専門の業者に委託する方法もあります。適切な方法での処分をしてくれる専門業者は、優良産廃処理業者として医療関係者から重宝されています。業者によって取り組み方やサービス内容は異なるため、利用前に費用面を含めた各種条件を確認しておくとよいでしょう。
医療鍼の廃棄にかかる費用相場は、地域により差があるものの、一般的には20リットル容器の年1回回収で4,000~8,000円とされています。医療機関側としては、医療鍼などの医療廃棄物を業者が設置した専用の容器に入れておけば、自動的に引き取り作業を年に1回行ってくれるため、便利です。自分で処分の手続きをすることなく、適切な廃棄ができるため、専門業者の起用には大きなメリットがあるといえるでしょう。
専門業者の中には、自治体から認定を受けた優良産廃処理業者が存在します。信頼できる業者を探す際は、認定を受けた業者に優先的に相談するとよいでしょう。
【優良産廃処理業者を利用するメリットとは】
医療関係者にとって、優良産廃処理業者を利用することには多くのメリットがあります。以下に、優良産廃処理業者を利用する主なメリットを3点紹介します。
● 環境に配慮した事業活動のアピール
● 透明性のアピールにつながり企業としての信頼性を高める
● 処分実施状況等の確認免除
自治体に認定された優良業者を利用しているということは、周囲に対して環境に配慮した事業活動を行っているというアピールにつながります。企業イメージの向上の面において、大いに効果のあることといえるでしょう。
また、企業の信頼性を高める効果も期待できます。優良他社に廃棄作業を依頼するということは、自社の透明性のアピールにつながり、医療関係企業としての信頼性の証明につながります。
さらに、処分実施状況の確認報告などを免除されるのも、大きなメリットです。医療従事業者の場合は、医療関連の廃棄物を適切に処分していることを報告する義務があります。自治体から認定された優良産廃処理業者に依頼している場合は、自社での報告義務が免除されるため、事務手続きの面からでも大きなメリットがあります。
<まとめ>
【医療鍼の廃棄はルールを守って信頼できる優良廃棄業者に相談しよう】
医療鍼は、感染性廃棄物(鋭利物)に準じる方法で廃棄するのが一般的です。しかし、自治体によって引き取りを行っているケースもあるため、居住地のルールを確認して順守する必要があります。近年は在宅医療を行うケースも増えているため、個人での処分方法もあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
一方、優良産廃処理業者に委託して廃棄を行う方法もあります。適切な廃棄ができるのはもちろん、環境配慮のアピールなどのメリットが得られるため、優良産廃処理業者の起用は積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
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