「サーマルリサイクル」という言葉を耳にしたことはありますか?近年、マイクロプラスチックによる環境汚染が話題になり、関連してサーマルリサイクルも注目されるようになりました。
しかし、「よく耳にするけど詳しい意味は知らない」という方も多いのではないでしょうか?
実は、サーマルリサイクルは日本で生まれた和製英語です。そのため、海外では違った意味で捉えられる場合があります。
この記事では、サーマルリサイクルという言葉の由来、日本と海外で違う言葉の意味についてご紹介します。
はじめに、日本で用いられるサーマルリサイクルの意味を紹介します。
日本でサーマルリサイクルと言うと、廃プラスチックなど廃棄物を焼却し「ゴミ発電」することを意味します。火力発電では、通常石炭を燃料にして電力をつくります。サーマルリサイクルにおいては、石炭の代わりに熱エネルギーを持った廃棄物を活用して、発電を行うわけです。
廃棄物を燃焼させて回収した熱エネルギーは、発電の他にも温水供給に用いられます。本来は廃棄物として捨てられるゴミを燃焼させて、熱エネルギーを回収して再利用する。したがって、「熱をリサイクルする=サーマルリサイクル」と呼ばれています。
日本国内でサーマルリサイクルという言葉が初めて公式に使われたのは、平成12年6月2日に公布された「循環型社会形成推進基本法(以下、「循環基本法」と記載)」です。実際に循環基本法2条7項で、「熱回収(サーマルリサイクル)」という記述があります。この記述により、近年の日本国内では「熱回収」がサーマルリサイクルと解釈されるようになりました。
この章では、資源循環におけるサーマルリサイクルの位置づけについて紹介します。通常、リサイクルには次の3つの種類があり、
① 廃棄物を原料の状態まで戻して再利用する「マテリアルリサイクル」
② 廃棄物を化学的に処理して全く別の物質として再利用する「ケミカルリサイクル」
③ 廃棄物を燃焼させて発生した熱エネルギーを再利用する「サーマルリサイクル」
があります。
サーマルリサイクルがどんな位置づけなのか理解しやすいよう、まず①マテリアルリサイクル、②ケミカルリサイクルについて見てみましょう。
マテリアルリサイクルは、アルミ缶のリサイクルを考えるとイメージしやすいです。ゴミとして回収されたアルミ缶の多くは、一度ドロドロに溶かされ、再びアルミ缶として再生利用されます。ここで注目してほしいのは、アルミを原料として再利用している点です。マテリアルは、日本語で「材料・原料」を意味します。つまり、原料としてそのまま再利用することをマテリアルリサイクルと呼ぶのです。
次にケミカルリサイクルについてです。ケミカルリサイクルの身近な例として、廃油石鹸の製造を紹介したいと思います。
石鹸は、油と苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)という物質を化学反応させてつくることができるのをご存知ですか?油脂を含んでいれば石鹸の原料として用いることができ、使用済みの油を使ってつくった石鹸は「廃油石鹸」として再利用できます。はじめは廃油と苛性ソーダに分かれていたものが、混ぜ合わせると化学反応を起こして、石鹸として再利用できるのです。
サーマルリサイクルは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルが不可能な廃棄物に対して行われる、いわばリサイクルの最終手段です。マテリアルリサイクルもケミカルリサイクルも、混合廃棄物に対しては行えません。しかし、サーマルリサイクルは混合廃棄物であっても、燃焼させて熱エネルギーを取り出せるので、リサイクルの最終手段として用いられています。
日本ではリサイクル手段のひとつと考えられているサーマルリサイクルですが、海外ではリサイクル手段として認められていません。
海外から見ると、サーマルリサイクルは単に熱回収を行っているだけと解釈されています。サーマルリサイクルが単なる熱回収と解釈されるのは、リサイクルの定義が日本と海外でことなるためです。海外におけるリサイクルは「廃棄物を原料に近い状態まで分別・加工して、新しい製品や異なる製品として再生させること」を指します。
「日本国内の廃プラスチックリサイクル率は80%以上と高い水準である」と言われていますが、実は廃プラスチックの70%以上は燃料として利用されています。つまり、海外からみると日本ではほとんど廃プラスチックはリサイクルされていないと解釈されているのです。
「サーマルリサイクルはリサイクルの一手段だ!」と言うと、海外の方々とは解釈が異なることは覚えておきましょう。
サーマルリサイクルは、「リサイクル」と言われるくらいなので、環境にやさしいと思われる方もおおいのではないでしょうか。実は、サーマルリサイクルは環境にまったく悪い影響がない手法ではないのです。この点は、ぜひ覚えておいてください。
なぜ環境に悪影響を与えてしまう要素があるかというと、廃棄物の燃焼にともなって二酸化炭素を排出するからです。二酸化炭素は温室効果ガスと呼ばれ、地球温暖化を悪化させることが広く知られています。石油や石炭などの化石燃料を燃焼させるよりは、サーマルリサイクルを行った方が確かに二酸化炭素排出量は少なくて済むでしょう。しかし一定量の排出はあるため、環境にやさしいリサイクル手法というには難があります。
しかし、サーマルリサイクルにももちろん良い点があります。それは廃棄物の減容(体積を小さくすること)です。廃棄物の体積は、燃焼させて灰にした方が小さくなります。廃棄物の減容の良い点は、埋立処分場の寿命を引き伸ばすことができる点です。特に日本のような島国では、埋立処分場の確保が今後難しくなると言われています。サーマルリサイクルによる廃棄物の減容は、日本においては重要な取り組みなのです。
サーマルリサイクルには、今後解決しなければならない大きな問題があります。それは、廃棄物の減容に伴う有害物質の濃縮への対応です。先ほど紹介した二酸化炭素の排出も大きな問題ですが、それ以上に有害物質の濃縮問題は解決の難しい課題と言えるでしょう。
廃棄物中に含まれる有害物質は、燃焼させても消えて無くなるわけではありません。そればかりか、ゴミ全体の体積は小さくなるので、有害物質の濃度は上昇してしまうのです。濃度が上昇した有害物質は、外環境に漏れ出さないよう厳重に管理しなければなりません。具体的に言うと「管理型埋立処分場」に埋立処分する必要があります。しかし、管理型処分場は新たにつくることが難しく、埋立場所の確保が困難な状況です。
日本において、サーマルリサイクルを継続するためには、廃棄物の燃焼灰を安全に埋め立てられる場所の確保という問題も解決しなければなりません。
いかがでしたでしょうか。サーマルリサイクルが、廃棄物を燃焼させて発生した熱エネルギーを有効活用する手法であることが理解できたのではないでしょうか。また、最終的に発生する燃焼灰の埋立場所確保という課題についても理解してもらえたと思います。
サーマルリサイクルは、リサイクルの最終手段としてなくてはならないものです。しかし、サーマルリサイクルにばかり頼ると、燃焼灰の埋立場所が溢れ、有害物質が外環境に漏れ出す恐れがあることも覚えていてほしいと思います。
サーマルリサイクルに頼りきるのではなく、普段から廃棄物の排出をどのように抑えるか、わたしたちも真剣に考えていかなければなりません。
株式会社スリーエスでは、廃棄物収集運搬業を主体にビルメンテナンス、産業廃棄物中間処理、リサイクルなど「環境」をキーワードに事業展開し、地域環境と地域福祉に配慮し快適な空間作りや地域社会への貢献を目指しております。
サーマルリサイクルについて関心やご相談のある方はぜひ弊社へお気軽にお問合せください。
※この記事に含まれる情報は公的機関の掲出物ではありません。お客様の責任でご利用ください。